渡良瀬ラプソディー [第2話]

フラフラとネコが居そうな路地裏を通りながら、目的地の石畳の方に向かって歩いていた。
少女からの情報で、野良ネコのキララは黒ブチのネコでお腹のところに星形の模様が二つ大小あるらしく、それがキララの名前の由来らしいのだが、黒ブチのネコなんて足利だけでも、何十匹いるかわからないよな。
もう一つ、キララにはゆあちゃんが学校の工作で作ったビーズでできた首輪が巻き付けられているらしい。
プラバンで作られていてハート型のネーム付きだ。
懐かしいな~、小学生の時よく作ってみんなに配ってあげたり絵のうまい奴に描いてもらってたよな。
ちょうど、そんなこと考えていたら、鑁阿寺南門の前まで来ていた。

ここは、足利の人なら来たことのある場所で、地元の人からは『大日様』と親しまれていて、大晦日には、除夜の鐘を鳴らしに多くの人たちが訪れるところで、お寺兼公園となっている。

お寺の周りには、お堀がありそこには鯉や鴨、亀、小魚などのが多く泳いでいる。
最悪、食べ物に困ったらここにとりに来ればいいかな。
鯉コクと鴨鍋…
悪くない鴨。
なんてね!
バカなことを考えていたらお目当ての公園に到着。
昔ながらの遊具点々と並んでいて、平日の昼にも関わらず、賑わっていた。
ベビーカーを押しているマダムや年金暮らしの優雅なおじいちゃん達が小型犬の散歩など、各々の日常を楽しんでいる。

いつもの足利で、安心する。
特に今日はふらふら散歩するには、最高の日だった。
若葉が生い茂り始めた緑道の中を進み、近くお店で、鳩豆などが売っていてそれを求めて鳩が数百匹園内にいる。
それを求めて、ハンターである。野良猫も多いのだ。
しかし、最近では近くのひとが餌などをあげておとなしくなっているみたいだった。
公園内を散策しながら見て回ったが、目星のネコには出会えなかった。
「まぁ~そんな簡単にな見つからないか~」
お堀の周りを見て回っているときにちょうど猫たちに餌をあげていた。
おばさ…いや、お姉さんがいたので、事情聴取してみることにした。
「こんにちは~」
と声をかけいろいろ聞いてみて興味深い情報が出てきた。
1ヶ月~2ヶ月くらい前の、お昼ごろにいつも通りのエサやりのため公園内の広場に出向いたときに、一人怪しい男がいたらしく、そいつは、黒のパーカーに黒いズボンをはいていて、黒い帽子を深くかぶって顔はわからなかったが、帽子はよく知るスポーツブランドのものだったそうで、

周りをキョロキョロしながらあたりを物色していて。
鳩に向かっておもちゃの銃を発砲していたらしく、
鳩がバァァァァァッと飛び立つと男は愉快そうに笑みを浮かべてフラフラと鳩がいた場所で回っていた。と、のことだった。
そのお姉さんは気味が悪かったので遠目でみていたのだが、その男に、気づかれたらしくそそくさと、どこかに行ってしまった。
それ以来、見かけてはいないとのことだった。
「最近は物騒になってきたよな~」
電車内で、急に刃物で切り付けられるとか、駅の入口で刃物でめった刺し止めようとした人もついでに殺すって、恐ろしいよ
その動機が誰でも良かったっていうんだから対処のしようないってのがたちが悪い。
そんなことが足利でもあるのかと、驚いた。
お姉さんにお礼を言ってまたネコ探しにもどった。
日も暮れ始めて、暇人でもこんだけ歩けば流石に疲れてしまった。
結局、ネコも情報もあまり得られなかった。
肩を落として、帰路につこうかと思ったが、
グゥゥ~
気が付けば朝からろくに食べていなかった。
贅沢は禁物なのだが、今日はいいかと自分に言い聞かせて、馴染みの店に向かった。

そこは、地元の人なら知っている。赤提灯の居酒屋で、うちの家は両親共働きで、二人とも忙しいときは妹と一緒に来てご飯を食べさせてもらっていた。
「よぅ~いらっしゃい! 久しぶりじゃん どうぞ~」
ここの大将は自分と5歳年上のお兄さんで、子供の頃よく遊んでもらっていた。
店の二階が子供の部屋になっていて、そこでテレビゲームなどを一緒に遊んでもらっていた、そこからの知り合いだった。
「お久しぶりです。最近いろいろあって中々これなくて すいません」
「聞いたよ、辰さん大変だったね。とりあえずビールでいい?」
辰さんとはうちの爺さんのことだ。
そこから積もる話もあったので、いろいろ話をした。
「カズさんいつもの、もつ煮もいいですか」
ここのお客さんも昔からの知り合いが多く居心地がよかった。
そこで常連のやすさんから気になる情報をきいた。
やすさんはみんなからはやっさんとよばれていてほぼ毎日いるんじゃないかと思うほどいつもいた。
ここいらの情報通で、足利のことは大体知っていて、俺の爺さんのこともその日のうちに知れ渡っていた。
やすさんによると最近、河原の近くに小動物の死骸が捨てられているとのことで、最初の頃は鳩、蛇、カラスなど、ボーガンのようなもので、打たれて殺されていたらしいのだが、最近になって、エスカレートしてきているそうで、木に括り付けたりして目に付きやすい所に飾っているようで、
それが小動物などになっているとのことで
周りの人が気味悪がっているとのことだった。
おれは、まさかと思いながらとりあえずそこまで気にしないようにした。
「カズさん レモンサワー濃いめで」
その日は、遅くまで飲んでしまった。歩いて帰路につく中、夜中の風は肌寒く薄着の肌にはこたえて酔った頭を簡単に冷ましてしまっていた。
やすさんの言葉が頭の中をグルグル回っていた。
そして、家の前につき入口の引き戸の前の
指名手配犯の文字が目に吸い寄せられていた。
「まさかね」

俺は建付けの悪い扉をこじ開けて、急な階段を駆け登りセンベイ布団にくるまり、ルクルとゆれる木目に目をまして眠りについた。
つづく
ひとり 店長