【ツルミンの足利放浪記05】年イチの異世界「恵比寿講(えびすこう)」
秋の終わりと冬の始まりの日
秋の終わりと冬の始まりの日はいつだと聞かれたら、筆者は11月19日。と即答するだろう。
この日を境に、それまでの穏やかな秋の空気から一変、足利を包む空気がツンとして急に冬らしくなる。
なぜ11月19日なのかというと、その日が「恵比寿講(えびすこう)」だからだ。
恵比寿講とは
恵比寿講とは商売繁盛・無病息災を願うお祭りで、西宮町にある西宮神社で行われる。
つい最近、西宮町の入り口に、「秋季例大祭」の看板が取り付けられた。

参道は、普段なら人気(ひとけ)のない暗く寂しい道だが、恵比寿講の日に限り屋台がひしめき合い、人が往来し大賑わいとなる。そのギャップは、さながら異世界に来たような感覚だ。


境内では、夜通しお神楽が行われ、笛の音色に合わせてひょっとこやえびすが踊っている。

筆者は、この恵比寿講の地区の出身なので、幼い頃から恵比寿講を楽しみにしてきた。
市立西小学校(現さいこうふれあいセンター)へ通学していた筆者は、授業で恵比寿講へ行かせてもらった。その日だけは数百円のお小遣いを持っていって良いというのは、恐らく西小生の特権だったのだろう。
西宮町に在住する女子児童は、巫女の手伝いをさせられた。お祭りへ行き、神社で働く巫女姿の同級生を見ると、馴染みの近所の同級生が、この日だけは見知らぬ他人になってしまったような、不思議な感覚になった。
恵比寿講が盛り上がるのは夜。こどもの頃は門限外の時間帯。だけどこの日は特別に少しだけ門限が延びた。
くじ引きに射的。りんご飴。ドキドキしつつも、夢中になって屋台をハシゴした。
恵比寿講というと、そんな幼い記憶が蘇る。


恵比寿講へ行こう
今は筆者も大人になり、子どもの頃に夢中になったくじ引きはやらない。
かわりに、自分で事業を行う身となり、商売繁盛の祈念に毎年足を運んでいる。

お社の中で祈祷してもらい、お札と御神酒をいただき、熊手を買い替える。
そうすると、なんだか気持ちが入れ替わったみたいに新鮮な気分になる。
お札や熊手は、神棚代わりに職場の本棚の上に飾っている。

え?商売をしていないって?
商いを行っていない人でも、家内安全・無病息災など、十分にご利益を期待できる。
年1日だけの、異世界。ぜひ足を運ばれたし。

【恵比寿講(えびすこう)】
毎年11月19日・20日開催(メインは19日)
西宮神社所在地:〒326-0817 栃木県足利市西宮町2931
【ライタープロフィール】 鶴見 裕也 足利で活動するデザイナー。表向きはブランディングデザインを行っているクリエイター。実は面白いこと、くだらないことが大好物。趣味はテニス。お酒大好き。足利市内を徘徊している。今年ジムに行き始めました。