読むまち
  1. HOME
  2. ブログ
  3. このまちを知りたい旅
  4. 【このまちを知りたい旅vol.9】花農家が急成長! 足利花き部会・フラワーファームイマイズミ

【このまちを知りたい旅vol.9】花農家が急成長! 足利花き部会・フラワーファームイマイズミ

このまちでお店を開き、日々営み、店や仲間を通して色々な繋がりができた。
けれどまだまだこのまちのこと、知らない場所も人も沢山ある。
『足利をもっと知りたい!』の想いに導かれて、仲間と時々ローカルツアーをしてみることに。

北に緑豊かな山並み、南に関東平野、中央に渡良瀬川が流れる豊富な日照、肥沃な大地に恵まれた地域。このまちが他とちょっと違うなあと思えるのは、商人(自営業者、サラリーマンetc…)と同じくらい、農業人の営みも、多く見られるところだ。常連客には、いちご・トマト、ニンジン、ニラ、アスパラガス・麦農家に畜産、ワイナリーで働く人。ミッドタウンのサポートメンバーにも、″のりちゃん″という米農家さんがいたりと、日本の食を担う生産者が、身近に多く暮らしている。
その中で、ひときわ異彩を放つ生産者チームが、食物でなく花を栽培する足利花き部会。
中でも目覚ましい成長を遂げている種が「トルコギキョウ」だ。
今や栃木県内のシェア90%、全国でも指折りの生産地に、足利を引き上げている。
今回は、このまちの花農家へスポットを当ててみる。

人は何で生きるか

渡良瀬川の南側、そのちょっと東。
山清スーパーの脇の道を、ずっとまっすぐ行くと、例幣使街道の八木宿に交差する。そのさらに先へ先へ進んで、たどり着いた島田町に、「フラワーファームイマイズミ」がある。
ご縁があり紹介頂いた、足利花き部会・現会長を、メンバーたちと訪問した。

集合場所は会社や家屋が建ち並ぶ路地の一角、出荷準備用の作業場だ。
出迎えてくれたのは、会長の今泉孝夫さんと妻の文子さん。
中に入るとすでに、スタッフの方10名ほどで、トルコギキョウの出荷準備をしていた。
「前日に花切りをして、今朝は午前8:30から、皆で作業を始めています」と孝夫さん。
小さいつぼみを切って10本1束にまとめる。JAで集荷し、東京や東北の市場へ旅立つ。
作業場の壁には、海外生活を送る娘さんが描いたハッピーな壁画。看板も娘さん作、温かい雰囲気の中で、スタッフの方々がどんどん作業を進めていく。

トルコギキョウの魅力とは?
「すごく日持ちがするし、色が多彩で楽しめるところです」
花は笑顔を生む。贈られた側の嬉しさがダイレクトに還ってきて、自分も嬉しくなる。
「出かける時も、持ち歩きたいくらいなんです(笑)」と語る孝夫さんはもう笑顔。

足利花き部会会長 今泉孝夫さん

今泉家は太平洋戦争中、茨城県常陸太田市から足利へ疎開移住し、3代に渡って水回りや空調の設備工事を扱う会社を経営してきた。つまり、まるっきり非農家。親戚に農家はいるが、繁忙期の手伝いの経験も無い。
「私が就農したのは、15年前なんです」
きっかけは地元消防団の仲間で、先にトマト農家から花農家となった方の存在。
「足利のトルコギキョウを最低でも日本一にする!」という彼の思いが、孝夫さんの情熱に火をつけた。
2011年に起きた東日本大震災の経験も影響。落ち込んだ人の心を、花が明るくする場面を目の当たりにした。人は必ずしも、もの食うだけで生きているのではない。自分もそんな「笑顔を生み出す」仕事をしてみたいと思った。
当然のごとく親戚・家族は反対。なぜリスクを負ってまで新事業を起こすのか、なかなか理解されなかった。
そんな時、妻文子さんだけが「いいよ」と後押ししてくれた。
「彼は今まで趣味も無い仕事人間だったんです。それが、自分からやりたいと言ったのは、これが初めてでした。」
一番近い人が応援してくれる。とても心強い船出。

妻 文子さん

農家と土

まずどこにハウスを建てるか、土地を借りたいが借りる場所がない。代々農家の家には、異業種から参入する者へ、用地を提供することへの抵抗感が少なからずある。先祖代々護り繋いだ土地を、汚されてしまうかもしれないという恐れ。「土地」は農家にとって命と同じくらい大切なのだと痛感した。
ようやく、花き部会の仲間の紹介で、農地を借りることができた。

トルコギキョウの栽培で特に難しい点は「水の管理」。それも水を我慢する難しさだという。水をくれすぎて土を壊してしまう、一度入れると出せない。その塩梅とは、農地毎に土も違うし、時期や年毎にも違う。どんなにマニュアル化、自動化が進んでも、最後は経験に培われた感覚。
「土に水が沁みている音と溜まる音の違いを聞いて、苗に水をくれるんです」と孝夫さんは言う。

現在、足利花き部会は32団体が加入している。
新規就農数が右肩上がりの現象は異例で、全国から視察に訪れる程。
その理由は?
「チームワークがいいんですよ。成功も失敗も、シェアして活かす流れができているんです」
多い時は、月に3回研修会を実施。新人へのサポートも万全。初年度の水管理、夏から秋に移り変わる時の温度管理等。迷ったら先輩をすぐ呼ぶ、先輩はすぐに駆け付ける。必ずどうにかしてくれるという信頼関係、安心感があるからこそ、土木、製造、農協職員など、異業種からの参入者が増加している。
2025年11月、初出荷となった新規就農者・樋口さんにもお話を伺った。
何故トルコギキョウ農家になろうと思ったのですか?
「他の作物と比べて、生活サイクルが自分に合っていると思ったんです。あと、先輩方がとても楽しそうに働いている姿を見ていいなあと」
お酒の席が好きな楽しい仲間たち。

新規就農者 樋口さん

初年度ということで苦労したところは?
「先輩のサポートがあったので、大きな失敗はありませんでした。部会単位の出荷だから、価格は新人もベテランも同じ。ただ、出荷時にいかに数量を上げるかが大変です。今は日に5,60ケースくらい」
15年前の孝夫さんは初年度、20kgも体重が減ったとのこと。妻・文子さんと2人で、10ケースが精いっぱいだったが、現在は400ケースを10名のスタッフで出荷できるまでになった。
それから、失敗も成功も事例を積み上げ、仲間と共有し、後輩たちの成長できる土(環境)を肥し今がある。

道なき道を作る「足利から世界へ」

作業場から少し離れた農地も見せて頂いた。
ビニールハウス2棟で45アールの広さ。約20種類のトルコギキョウを栽培している。
「東京では1本1000円で流通することもあるんですよ」

全国で、令和4年度のトルコギキョウ産出額は133億円、花き全体の3.6%を占める(令和4年生産農業所得統計・令和4年産花木等生産状況調査結果(農林水産省)に基づく)。
入学式、卒業式、結婚式、葬儀でもと、ハレの日ケの日の用途は幅広いが、日常生活を彩る花としても好まれる。
好みの色を選べるし、1本につぼみが沢山ついていて、長持ちするから。
「黒と青は栽培が難しいんですよ」
母の日に合わせて出荷するのは10種類。「物日」に合わせて出荷できるかも勝負どころ。
2025年は、夏が暑すぎて、丈が短いのに咲いてしまう花も多かった。
トレンドは、1年おきに波がくる。
前年人気の色は、多く生産されるから値が下がるという見込み。白、ピンク、ラベンダーは通年人気。花農家にもトレンドの先を読む力が求められる。面白いですね。

2027年3月には、国際園芸博覧会(通称花万博/横浜・上瀬谷)が開催、足利花き部会の出展が決定した。
出展者は、自治体・大企業が殆どの中、生産者としては足利花き部会が唯一。
足利のトルコギキョウが、海外の方に見てもらったり交流できることも楽しみだ。
すでに出展内容の打合せを重ねている。
「足利のトルコギキョウを世界へ!」道なき道を作る者にだけ見える景色がある。そういえば、遠いアメリカで奮闘する二刀流を思い出した。

このまちを想う

1日の終わり、ハウスを出るとひろがる麦畑越しの夕景が、孝夫さんと文子さんのお気に入り。
「富士山や秩父連山が遠くに臨めるんです」と文子さん。
足利は歴史があるきれいなまち。落ち着いて暮らせるところが好き。その一方で
「もっと人が集まる場が増えて、元気なまちになってほしいですね」と未来へのエールも頂いた。
このまちの生産者から得た「まちづくり」のヒント。次世代という花々が活躍・成長可能な、肥えた土(環境)の作り方だった。

<足利でトルコギキョウ農家になる方法>

・まずは、以下いずれかの担当窓口へ連絡
 ■JA足利営農経済部 営農振興課 新規就農担当
 ■安足農業振興事務所(県)
 ■足利市産業観光部農政課(市)
 *基本相談者からの内容は共有

・面談(就農相談カルテの作成)
 就農希望内容の聞き取り、研修制度や補助事業等の説明。(数回は実施。1週間程度の「農業インターン体験」などもある。)
・就農スケジュールの検討
 新規就農塾入塾の場合、部会長を交え研修先の選定 およその土地
・ハウスの検討
・新規就農塾審査会
・就農計画書の作成     
・研修(概ね1年間)
・研修開始3ヶ月で県・市・JA担当者・研修先・就農希望者による面談を実施
・研修後、認定新規就農者・認定農業者の修得
・就農

*新規就農塾=部会加入・JA出荷が条件。
 入塾しない場合JAからの研修先斡旋がないため、自分で探すこととなる。研修先として認められるかは市への確認が必要。
 また、制度資金をもらうには、認定を取ることが必要だが、新規就農塾を通らないと審査会が必要となる。

<自宅でのトルコギキョウ(切り花)お世話方法>

Q.切り花のつぼみがうまく咲かないのは?
A.固いつぼみだから。小さいつぼみをとると残したつぼみは咲く。
Q.長持ちさせるには?
A.水切りをしてください。水中でなくてもOK。目詰まりをするから切り口を切る。
水に少しハイターを入れるのもよい。(花は酸性を好む/除菌)

【ライタープロフィール】

なべのそこ
大正6年に建てられた古民家をベースに、色々やっています。
EVENT,RENTAL SPACE,LOCAL TOUR,and more

まちはなべ。
まるでおでんのタネみたいに、
多様なヒトモノコトが
なべの中を行き交っている。
ぐつぐつ煮込んで
滲み出した深~い旨みが
このまちの魅力だと私は思う。