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【喫茶店マスターの足利偏愛日記 VOL.2】

私の住む足利市には愛してやまない“人“がいる。

とある日曜日、子供と鑁阿寺の公園に行くと、ちょっと怪しげなおじさんが話しかけてきた。

『風船いるかい?』
『作ってやるよ!』

その二言と、優しそうなおじさんの話し方に子供の警戒心は皆無になった。

『うん!』と元気に答える子供。

その後バッグから取り出した細長い風船を膨らませ、また聞いてきた。

『何にする?ハート作ってやろうか?』
『うん!作ってー!』

ハートを作る風船おじさん

ハートの風船を作ってくれたチャーミングな笑顔のおじさんは、子供のハートを掴むのがうまかった。

風船おじさんにハートを掴まれ、ハートを持たされた子供

それが、私が愛してやまない人の一人、『風船おじさん』との出会いだった。
今回はそんな『風船おじさん』をご紹介します。

石畳通りを歩く風船おじさんを引き留め、無理を言って取材をさせていただいた。
ちなみに、今回あえて名前や年齢は聞きません。
なぜって?
名前を聞いたところで、私にとって風船おじさんは『風船おじさん』だから。
そのままでいい。いや、そのままがいい。
では、紹介していこう。

風船おじさんの標準装備姿

まず、風船おじさんの好きな食べ物は、バナナとか果物だそうだ
健康的な好物だ。
…いや、申し訳ない。これは省いてもいい情報だった。

改めて。

風船おじさんは、名草生まれの名草育ち。今はなき、名草中(現セミナーハウス場所。当時の校舎は火事でなくなった)の卒業生だそうだ。
サラリーマン(工場勤務)を32年ぐらいやり引退。
その後、たまたま見ていたテレビで風船作りを目にし、興味がわき、独学で学んだそう。
いつも持ち歩く、風船造りのノウハウが詰まった教本を見せていただいた。


バッグから取り出された教本はボロボロだった。
すんごいボロボロだった。
これを見ながら相当練習したのだろう。汗は滲んでいても、血が滲んでいないのが唯一の救いだ。
ただ、中央に見えるピエロの印刷が擦れて、より怖さを増している。
こんなピエロからは風船をもらいたくない。狂気しか感じない。

左ページの中◯彬さんのネジネジみたいなのが気になる


教本を開いてもらうと、作り方が載っているだけではなく、子供たちがより喜ぶようにと購入した様々なシールが挟まれていた。
これを見ただけでおじさんの優しさが感じられる。

『風船で動物を作ってあげる時に、子供にシール渡して貼ってもらうと喜ぶんだよ。』
『あと、ペン(油性)もたくさんあるよ。』

そう言うといつも持っているバッグからペンを出してきた。
しかも結構な数。。危うくペンおじさんと呼びそうになる数だったが、ぐっと堪えた。
ペンもやはり子供に渡して、好きに目などを描かせるようだ。
子供が楽しめるよう常に考えているんだなと思った。いい人だ。

そんな風船おじさんが、その場で作った風船を子供にあげるようになったのは、独学で学んだ風船造りをどこかで披露したくて、散歩ついでに寄った公園でやってみたところ、子供にウケたのがきっかけだそうだ。

その後、活動を続けていくうちにタウン誌に載ったこともあったと風船おじさんは誇らしげに言っていた。
活動を始めて10年以上。
そんな風船おじさんに足利の子供達にどのように育っていってほしいか聞いてみた。
足利の子供達にどのように育っていってほしいですか?

『そうだなぁ…。ありがとうの気持ちや、挨拶を大切にする子に育ってほしいな。』とおじさんは言う。

子供に風船をあげたとき、ちゃんと挨拶をさせているそうだ。
当たり前のようで、意外と大人ですらできていない挨拶。大切だよね。
風船おじさんの静かなる子供達へのやさしい思いを垣間見ることができたような気がした。
そんな風船おじさんに続けて最後の質問をしてみた。
今後の抱負などありますか?

『う~ん…手が動く限りは、風船を作り続けたいね』
『もうそんな先は長くないけど…。』

ブラックジョークを交えながらも、チャーミングな笑顔で静かな熱い思いを聞かせてくれた風船おじさん。

風船おじさんの優しげな手

街に出て、風船おじさんに出会ったら、警戒せず、風船おじさんの優しさにそっと触れてみてください。
大人も子供もきっといい1日になりますよ。
では。

【ライタープロフィール】
喫茶八蔵 店主 梁川健人
37歳 2児の父
楽しいこと、コーヒー、ビール、映画、町中華大好き
足利ミッドタウン商店会 イベント担当